ワンルームマンションやアパートの不動産投資において入居者が死亡したら、一体、何をどうすれば良い?
不動産事業やっているとき、もしくは今後やろうとする時に必ず考えること、それは入居者が死亡した時にどうすればいいのか、何にどれだけお金がかかるのかです。
このブログでは私が初購入した投資用ワンルームマンションにおいて、入居者が孤独死(しかも首吊り自殺)した時の実体験を書きます。
誰に言えばよいのか?賠償請求はできるのか?保険がおりるのか?特殊清掃費用は?次の客付けまでの期間は?家賃はどれくらいが良いの?告知はどうする?など、私が悩んで対応してきたことを書きます。
私自身経験したことで非常に勉強になりましたし、皆さんが思っていることを実体験を通じて書いてますので役立つと思います。
今後、皆さんに同様の事態が起きた際、スムーズに対応できるよう備忘録として残しておきます。
特に、私と同じアパート・ワンルームマンション所有者のみなさんの参考になれば幸いです。
はじまりは管理会社からの連絡
2021年10月、普段全く連絡のない不動産管理会社から留守番電話が入って何事かなと再生してみると、「区分マンションで入居者が死亡した」という連絡でした。その後、話を聞くと首吊り自殺らしく、周囲から異臭がするということで発覚、死亡から1ヶ月ほど経過して腐敗が進んでいるため本人確認できない、確認のためにDNA鑑定で1ヶ月ほど時間が必要、現在、警察とご家族が話している段階、ということでした。
聞いた初めは非常に困惑して、何をどうしたら良いか全く分からない状態でした。
家賃は誰が保証してくれるのか?
まず、不幸にも首吊り自殺後から発見までに1ヶ月経過していたので、部屋の損傷が非常に気になりましたが、幸いにも(?)ベッド上での首吊りであったため、床への損傷はほとんど有りませんでした。
まず最初に調べたのは、家賃保証はできるのか、誰か保証してくれるのかでした。
結論として、誰も保証できず、私の負担であることが分かりました。
家賃保証会社は死亡時の家賃保証はなかった
家賃保証に関しては、家賃保証会社に入っていましたが、死亡時の家賃保証をするのではなく、支払い延滞時の保証がメインであったため家賃の保証はありませんでした。
火災保険の特約も入っていないので家賃保証なし
火災保険の特約(死亡による家賃が得られない期間の家賃を一定金額保証したり、事故物件になることによる家賃減少分を一定期間保証してくれる特約)に入っていなかったため家賃保証はありませんでした。
つまり、客付けまでの約5ヶ月間は収入ゼロという状況になりました。
遺品整理費・原状回復費は「誰に」「いくら」損害賠償請求できるのか?
次に、死亡者の遺品整理・現状回復費について賠償請求できるのかということです。少し難しい話になりますが、誰が負担するかについては4つのパターンがあり、上から順になります。
■遺品整理費・原状回復費:負担者のパターン
①入居者の貯蓄および火災保険
②連帯保証人
③遺族のご家族
④オーナー(私) ・・・①入居者の貯蓄等なく、②連帯保証人がおらず、且つ、③ご家族が相続放棄した場合
⑤家賃保証会社の保証
結論として、賠償請求することはできませんでした。内容としては、
①入居者の貯蓄はなく(他にも色々借金があったようです)、火災保険も切れていた
②連帯保証人はおらず(最近は連帯保証人はつけず家賃保証会社だけでも賃貸OKとすることが多い)
③ご遺族が相続放棄した
ということで、①②③ともに不可、結果として、④オーナー(つまり私)と、⑤家賃保証会社の保険にて負担となりました。大抵、損害賠償請求されるためご家族も相続放棄することが考えられるので、相続放棄有りきで考えておき、オーナー負担になると考えておいた方が良さそうです。
トータル費用
トータル費用は62万
最終的にかかった費用はトータル62万円と比較的低い価格だったので自己負担することはなく、私が契約している火災保険と家賃保証会社の保証で全て賄うことができました。
今回はフローリングの張替えが上張りだけで済んだため比較的低価格だったとみています。
通常、死亡後の発見が遅い場合、床の損傷が酷くなることでフローリングの張替えが必要となるため、トータル200~250万程度になることもあると伺いました。
■トータル費用 62万円・・・遺品整理および現状回復費用(特殊清掃費用)含む
●見積書時点・・・約115万円(税込)
【遺品整理】
26.3万円:仕分け梱包積込み、廃材処分作業、トラック代
【防臭・現状回復費用】
78.5万円:クロス張替え、廊下フローリング上張り張替、特殊清掃、オゾン機設置(7日間)
●実際費用 ・・・62万円(内訳不明)
<負担額内訳>(推定)
・オーナー火災保険 32万円 (三井住友海上)
・家賃保証会社保証 30万円
家賃設定は12%ダウンで成立
自殺のケースや死亡後長期経過してから発見された場合、心理的瑕疵物件、いわゆる事故物件となり入居者がつきにくく家賃を下げざるを得なくなります。
ネットで調べる限り、家賃設定は約20~30%下げるのが相場となっていましたが、物件所在地は都心7区内(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、豊島区、文京区)だったのでそこまで下げなくてもいけるかもと思っていました。
結果、これまでの従来家賃84,000円から12%ダウンの74,000円で入居が決まりました。もちろん心理的瑕疵物件ということは承知の上での契約成立です。
いきなり74,000円設定(12%ダウン)で出したら入居が決まったのでもう少し高めスタート、もしくは、「敷金無/礼金無」のところを1つ有りでスタートしても良かったかもしれません。
また、告知義務が不要となった場合(3年程度?)は通常家賃に戻したいため、2年間の定期借家契約としました。
■入居者契約条件
月74,000円(賃料+管理費等込) /敷金無/礼金無
※定期借家契約:契約年数2年

家賃設定の考え方
家賃の考え方は初め当初家賃の12%ダウンの設定で決まらなかったら少しずつ20%まで下げていこうとしていました。結果的に募集してから1ヶ月足らずで契約が決まりました。
参考までに12%ダウンで成立しない場合は下記のように考えていました。
※もともとの家賃:84,000円
(1)「案①74000円(敷金無/礼金無)12%ダウン」で1週間様子見。最大1ヶ月くらい見る
(2)1ヶ月の状況次第で「案②69000円(無/有)18%ダウン&礼金のみ有」もしくは「案③さらに礼金無しにする」とする
参考までに、インターネットでの閲覧数は、募集をかけてから約2週間で閲覧140件。通常1日で2件、2週間で28件とのことなので、通常より非常に多いことが分かりました。
管理会社曰く、あと2週間、トータル1ヶ月あれば契約成立するでしょうとのことでした。幸運なことにトータル1ヶ月かからずに入居者は決定しました。
都心7区の物件だったこともあり、心理的瑕疵物件でもある程度需要があったと考えています。
入居者決定までの5ヶ月間の流れ
私の場合、家賃収入が切れた期間は5ヶ月でした。時間がかかった方と思っていますが、これは死亡者の確認が1ヶ月だったためmDNA鑑定による本人確認で1ヶ月時間を有し、遺品整理までの時間がかかったためと考えています。参考までに簡単に管理会社連絡から入居者決定までの履歴を記しておきます。
入居までの5ヶ月間の流れ
2021年10月 | ・管理会社から死亡との一報あり ・特殊清掃業者部屋立ち入り費用見積もり |
2021年11月 | ・現状回復・清掃費用見積書および部屋状態の写真受領 ・火災保険会社へ請求連絡。見積金額約115万に対して85万円で承認予定。 ・遺族のアクション連絡なし(司法書士とのやりとりとなっている状態) |
2021年12月 | ・DVA鑑定で死亡者が入居者本人であることを確認 ・遺族側の司法書士から遺族放棄する旨の連絡受領 ・家賃保証会社とのコンタクトスタート。最大30万円保証 ・原状回復費・清掃費用の見積り詰める |
2022年1月 | ・現状回復および特殊清掃スタート期間は約3週間、1月末完了 ・入居者募集スタート |
2022年2月 | ・清掃完了 ・入居者契約成立 12%ダウンの74,000円/月 |
2022年3月 | ・入居開始 ・三井住友海上火災保険の家主費用特約を契約(8年で約20000円=年間約2,500円) |
家主費用特約でリスク管理できる
今回、火災保険で遺品整理費用と現状回復費用はカバーできていますが、空室時の保証や事故物件になることによる今後の家賃減少分はカバーできていません。
これを保証する火災保険のオプションとして「家主費用特約」というものがあります。これは、「三井住友海上のGK すまいの保険(すまいの火災保険)」契約の際に付与できるオプション特約です。
私はこの後、8年間-約20,000円で契約しました。
地震保険とほぼ同じ金額ですので地震リスクを取るか、死亡リスクを取るかの天秤で考えるのが良いと思います。
三井住友海上のサイトによると、以下のように書いてあります。良かったら参考にしてください。
「賃貸住宅内での死亡事故(自殺、犯罪死または賃貸住宅の物的損害を伴う孤独死)発生に伴い賃貸住宅オーナーが被る家賃収入の損失や、清掃・脱臭・改装・遺品整理等にかかる費用を補償します。
賃貸住宅建物を保険の対象とする、「フルサポートプラン」または「セレクト(水災なし)プラン」で家賃収入特約をセットした場合にセットできます。
(*) 2019年10月1日以前始期契約は「6つの補償プラン」、「4つの補償+破損汚損プラン」の場合にセットできます。
(GK すまいの保険、GK すまいの保険 グランドについての回答です。)
▼三井住友海上サイト「GK すまいの保険(すまいの火災保険)」
https://www.ms-ins.com/personal/kasai/gk/
▼家主費用特約とは何ですか?(三井住友海上サイト内)
予防対策
予め確認しておいた方が良いこと
予め確認した方が良いことを書きました。私の場合、家賃保証会社の保証30万円が効果的でした。また、保証会社はオーナーが決められるようです。一方で、入居者個人の火災保険が切れていたのは誤算でした。オーナーチェンジ物件だったため、管理会社が確認できていなかったとのことでした。
■予め確認しておいたほうが良いこと
1.入居者について
●家賃保証会社の保証内容(具体的には死亡時の保証内容)
●入居者が個人の火災保険に入っているか
2.オーナー自身について
●火災保険の家主費用特約に入るか
オーナーとしては火災保険の家主費用特約に入るかポイントとなります。
今回は自殺のケースですが孤独死も同様です。孤独死・自殺確率のリスクとその金額を考えた上で家主費用特約に入るか考えてみてはいかがでしょうか。なお、三井住友海上へ確認した限りでは、火災保険料は何回起きても変わらないとのことです。
地震保険に入るのであれば、金額がほとんど同じ、もしくは安い家主費用特約に入る方が良いという人もいると思いますので、各自リスクを考慮して検討してみて下さい。
予防策を取るのも1つの手
今回の敗因は死亡してから発見するまでに1ヶ月かかったところです。早く見つけることで、被害を最小限に抑えることができます。ヒアリングしたところ、特に高齢者向けと思いますがこのようなものがあるそうです。いずれも入居者の同意は必要ですね。
- 部屋やトイレのドアにセンサーを設置し、3日間動きを感知しなければお知らせメールが届く見守りサービス
- 賃借人に孤立死時に対応する契約をしてもらう(例:そのような保険に入って頂く)
管理会社選び
今回、管理会社の対応の良し悪しもよく分かりました。私は異なる管理会社で1件づつ区分を所有していましたが、今回の対象物件じゃない管理会社の方が非常に動きが早く、弁護士も紹介してくれたほどです。このような事象が起きた時に管理会社の強さや信頼度が分かります。
まとめ
最後までご覧頂きありがとうございました。本ブログでは入居者死亡時の対応についての実体験を説明しました。
今回は自殺のケースであり、精神的に非常にキツかったのですが孤独死も同様です。確率は低いですが皆さんに起きない話ではないです。
今回の発生費用は少なめですが、今後、約200~250万円くらいかかる可能性があることを認識し、保険に入っておくのか、それとも諦めるのか、リスクを見極めて今後のアクションの際の参考になれば幸いです。
尚、今回は私の場合の話です。最終的にはご自身でご検討する際の参考にして頂ければと思います。
以下、関連リンクです。
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無料相談を受けてくれるサイトもありますので参考にして下さい。